日本文化に秘められたパワー
丹田(たんでん)という言葉、ご存知ですか?
聞いたことはある、という方が多いかなと思います。気合を入れた時に、ぐっと力の入る場所、といえばイメージしやすいでしょうか。
「腹がすわる」とか「肝がすわる」っていいますが、それが丹田にエネルギーがしっかりと入っている状態。
つまりグラウンディング出来ている、地に足がついた状態だとも言えます。
一言でいうと、丹田は、身体とこころを支える要なんです。
丹田の力
丹田は全身に三つあります。上丹田(眉間の奥)、中丹田(胸の中央)、それから下丹田(ヘソ下)。
今回この記事で取り上げる丹田は、臍下丹田(せいかたんでん)とも呼ばれる下丹田、文字通りおヘソ(臍)の下に位置する丹田。ただ『丹田』と言ったときには、これを指すのが一般的です。
では丹田とは何なのかと言いますと、おへその下3~5センチぐらいの下腹の奥のほうにあるとされる、一種のエネルギーポイントだと考えてもらえればいいと思います。「肝(きも)」「腹(はら)」などとも呼ばれるものですね。
ここでなぜ丹田の話を持ち出したのか。それが気力とかやる気とかに関わっているからなんです。
ここにしっかり力を入れられるようになると、心身の活力が増し、集中力も上がります。
丹田は、柔道、剣道、弓道といった武道はもちろんですが、華道、茶道などでも同様で、日本の『道』と名の付くものにおいては、ことのほか重視されているポイントです。
この丹田にエネルギーが集まっていると、
背筋がシャキッと伸びる
頭がキリッとクリアーになる
心が鎮まる
集中力が増す
という状態になって、その結果、
やる気が起きる
気力が湧く
注意力が持続する
ブレなくなる
などなどのうれしい効果が期待できます(^^)
日常生活で丹田を感じる方法
でも、丹田ってよく分からない・・・
武道とかやるつもりもないし・・・
いま、そういう声が頭に浮かんだとしても、どうぞご心配なく!
私もそうです。というか、そうでした。
実は、この丹田を意識するのに、とっても簡単な方法があるのです。
日本文化の中で生まれ育ってきたあなたなら、とても簡単に実感できる方法です。
それは何かと言うと―――
日常の所作を一つ一つ丁寧にやってみること。
たとえばお家でお茶を淹れるときに、茶道のお点前のようなつもりで、すべての動作に集中して丁寧に想いをこめて行ってみる。
そうすると、なにやら背筋が伸びてきませんか?
下腹のあたりがどっしりと安定して、心が静かになって、お茶の香りがいつもよりも新鮮に感じられるかもしれません。
そうやって丁寧に淹れたお茶は、きっといつもよりもずっと美味しく感じられるかもしれません。どうでしょう?
日本の「道」と名付けられているものは、礼や所作をとても丁寧に行います。そしてそれをとても大切にします。
その理由は、この丹田にあるのかもしれませんね。
そして、あなたもわたしも自然と、生まれながらに備わっているかのように、そうしたイメージを身に着けているはずなのです。
たとえば和服を着た時のことを思い出してみてください。自然に立ち居振る舞いが変わったという経験、ありませんか?
ジーンズなら大股でドスドス歩いたり、椅子にふんぞり返るように座ったりしていても、和服だと自然と背筋が伸び、おしとやかに歩いたり、手元を気にしてみたり。椅子に掛けるときでも、すっと身体に芯が通っているような感じ。
そんな経験が、きっとあると思うんです。
試しに、床に正座して、たとえばシャツを丁寧にたたむ動作をしてみてください。
ほら、すっと背筋が伸びていませんか? 下腹に軽く力が入って、心が穏やかに集中していく感じ、しませんか?
丹田パワーが日本人を支えている?
こうしたことは自然と身内に、まるで細胞の記憶のように、そう言う感性が沁みついているように感じます。頭でどうのと考えなくても勝手に、そういう振る舞い、そういう反応になっている。
そういう時わたしたちは、腹がすわって、静かに、気力が満ちた状態になっています。
頭は集中して、しかもフレキシブル。身体はリラックスしていながら、活性化している。
周囲に注意を向けていながら、それを穏やかに見ている。そしていつでもすっと次の動作に移れる状態。
実はこれが、わたしたちに(もしかすると遺伝子的に?)備わっている、日本文化の真の凄み、かもしれません。
大きな災害が起きた時でもパニックに陥らず、他者をも気遣い、助け合おうとする底力。それをもたらしている源なのかもしれません。
美しい生き方の秘訣
腹にしっかりとエネルギーが入っていると、立ち姿も美しく見えます。心も澄んでいます。
イメージしてみてください。すっと背筋が伸びて、しっかりと頭を上げ、前を見つめた姿勢でいるときには、ネガティブなことを考えたり、人に悪事を企んだりはできないものです。
丹田は身体とこころを支える要なんですね。